SPnet 選任業務編



・新任教育・2号業務別教育資料・道路交通法-車が道路を横断する方法(25条・25条の2)





今回は「車両が道路を横断する場合」(道交法25条と25条の2)です。
「道路を横断する」という言葉は聞き慣れませんが、道路外に出る場合がこれに該ります。
道路の左側で工事をやっている場合や中央分離帯の工事をしている場合どに工事車両が現場に入るのがこれです。
徐行の意味・程度の知識も必要ですが、警備員として重要なのは「歩行者や後続車両の通行をじゃましてはならない」こと。
工事現場に工事車両をバックで入れるために、警備員が歩行者や後続車両を停めたら道交法25条の2違反で懲役・罰金となります。
「お願いして止まってもらった」としても警備業法15条違反になります。
停められた歩行者や後続車の運転手から警察に苦情があれば、所轄の臨時立ち入りがあってホコリか出ます。
選任は今回の内容をしっかりと教え込んでおかなければなりません。


車両の道路横断方法(道交法25条)
徐行とは(最高裁判例)
注意点
「歩行者・他の車両の正常な交通を妨害するおそれのあるとき」は行ってはならない。
  工事現場へダンプカーをパックで入れるために歩行者や後続車両を停める警備員は懲役か罰金
軽車両の道路横断方法


    
1.車両が道路を横断するとき(道交法25条・25条の2)


警備現場で言えば、道路の左側や右側に工事現場がある。
工事車両が道路からこの現場に入る場合です。
この場合、工事車両は走っている道路を左折・右折によって横断することになります。

この工事現場を警備員が誘導する場合に知っておかなければならない法規制です。


a.左折・右折をして道路外に出る場合の方法(道路交通法25条)


イ.左折して道路外に出る場合(25条)

・あらかじめ、できる限り左側端に寄る。 → あらかじめとは「30m手前」(2級検定講習)
・徐行する → 「徐行」とはブレーキをかけて1m以内に停止できること → 時速8㎞~10㎞(検定教本)

   
※参考:徐行とは

一定の速度を基準として徐行であるか否かを判断することは甚だ困難であるから、
具体的な状況に応じ、「その制動距離・惰力前進距離等を考慮に入れても事故の発生を避けうる程度の速度で進行すること」をいうものと解すべきであろう。
具体的には、10㎞/h以下の速度を指す場合が多いであろうが、
学説としては、プレーキ操作をしてから停止するまでの距離がおおむね1m以内となるような速度(時速に換算して、8㎞/h~10㎞/h)をいうとするものもある。
(※新実務道路交通法149頁)


裁判例でも「諸般の事情を考慮して具体的に認定する」としたものが多い。
判例には具体的数字を出しているものもある。

・最判昭44.7.1 判時562・80
「農耕車の速度が約10㎞/h以下であったので「直ちに停止することができるような速度」と認められる。」

・最判平15.1.24 判時1806・157
「左右の見通しのきかない交差点に進入するに当たり、何ら徐行することなく、30㎞/h~40㎞/hの速度で進行を続けた被告人の行為は、
  法42条1号所定の徐行義務を怠ったものと言わざるを得ない。」

もちろん、事案の具体的状況はさまざまなので、これらの数字がいつも適用されるわけではありません。


ロ.右折して道路外に出る場合(25条)

・あらかじめできる限り道路の中央に寄る。(一方通行の場合はできる限り道路の右側端に寄る。
・軽車両は中央に寄らなくてもよい。
・徐行する

    
b.イ・ロでの注意点

道路外に出るとは交差点を通過して他の道路に出る場合も含む。(検定講習)※交差点を曲がる場合のことです。
徐行は道路の左側端や中央に寄るときだけでなく、左折・右折して道路外に出るまで必要。(検定教本)
歩道・路側帯があるときは、その直前で一旦停車、歩行者の通行をじゃましないようにする。(17条)


※道交法25条(道路外に出る場合の方法)
「  車両は、道路外に出るため左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、徐行しなければならない。
 2.車両(軽車両及びトロリーバスを除く。)は、道路外に出るため右折するときは、
   あらかじめその前からできる限り道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端)に寄り、かつ、徐行しなければならない。
 3.道路外に出るため左折又は右折をしようとする車両が、
   前二項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、
   その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした車両の進路の変更を妨げてはならない。」
(罰則 第一項及び第二項については第百二十一条第一項第五号 第三項については第百二十条第一項第二号)
    





c.道路外に出るために左折,右折,転回,後退してはならない場合(25条の2)

・歩行者・他の車両の正常な交通を妨害するおそれのある時 → 左折・右折・横断・転回・後退してはならない。
・道路標識などで横断・転回・後退が禁止されている場合は横断・転回・後退してはならない。

※道交法25条の2
車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
 2.車両は、道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分においては、当該禁止された行為をしてはならない。」
(罰則 第一項については第百十九条第一項第二号の二 第二項については第百二十条第一項第四号、同条第二項)


右折横断禁止・Uターン禁止の標識・標示は次のものです。

車両右折横断禁止(左折は可) 車両転回禁止(後退は可


『質問です!』

どうぞ。

『後退禁止の標識とはどんなものですか?見たことがありませんが‥。』

  現在の「道路標識、区画線 及び道路標示に関する命令」には見当たりません。
  この命令の前の命令(昭和35年12月17日)にはこんな標識がありました。
  現在で、後退禁止を表す標識は一方通行標識しかないですね。

  このような標識がある場合は標識に反して右折横断・Uターン・後退をしてはなりませんね。
  工事車両を誘導するときに標識に反して右折・Uターン・バック誘導をしては道交法違反ですよ。
以前の後退禁止標識


道路の左側に工事現場がある場合、ダンプカーなどの工事車両をバックで工事現場に入れるために警備員が後続車両を停めたり、右側へ進路変更をさせたりしています。
これは25条の2の1項の「…歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは…左折・右折・横断・転回・後退…してはならない」に違反しています。
車の運転手は3月以下の懲役または5万円以下の罰金。
そのような誘導をした警備員には共同正犯・教唆・幇助として同様の罪が与えられるでしょう。

警備員が注意しなければならないのは、
・工事車両を左折・右折・転回・後退させて工事現場へ誘導する時は、歩行者や他の車両の交通を妨害してはいけません。
・歩行者や他の車両を止めるのは道交法違反となります。
・たとえ、「お願いして止まってもらった」としても警備業法15条にひっかかります。

この場合は、歩行者が来ないとき後続車両がすいたときにバック誘導をしなければなりません。
ダンプの運転手や工事関係者に文句を言われたら、道路交通法25条の2と警備業法15条を説明しましょう。
「しっかりした警備員だなあ!」と信頼されることでしょう。
しかし、そこまで芯のある警備員はなかなかいませんネ。


国道で後続車や歩行者を止めて工事車両をバック誘導している警備員を見かけたら、近くにいる検定2級者を呼びましょう。
そこに2級がいなければ、配置義務違反でその警備会社は営業停止ですね。
2級資格者が来たら、道交法25条の2と警備業法15条を詳しく説明してあげましょう。

所轄の警察署の生活安全課・警備業係にも警備会社名と工事現場箇所を告げて文句を言いましょう。
立ち入りのときに、苦情処理簿にこのことが書いてなければまた警備業法違反となります。

これは、他の警備業者いじめではありません。
このような警備員がいるからいつまでたっても警備員の待遇がよくならないのです。
警備業界の発展のために、どんどん文句を言いましょう。

※なお、検定2級資格者は必ず2級資格章を付けています。
この2級資格章を付けていなければ、2級資格を持っていても2級資格者とはなりません。
必ず2級資格章を確認しましょう。

    
d.軽車両の道路横断方法


『質問です!』

どうぞ。

『リヤカーや自転車が道路右側に入る場合、どうするのですか?』

右折して入らなければなりませんから、自動車・原動機付き自転車は道路の中央に寄って右折して道路を横断。
軽車両は道路の左側端に寄って、歩行者・他の車両が来なくなってから道路を横断して右側にいくしかないですね。

これは軽車両が進路変更をすると危ないし交通の流れが止まるからでしょう。


2.新任警備員のためのワンポイント

・道路に面した工事現場に工事車両を入れる場合、他の車両や歩行者を止めてはならない


つづく。




前へ/「車は左を走る」の例外   次へ/交差点での優先順位(36条・37条・43条)   選任業務編目次へ   警備総索引   SPnet2.TOP   SPnet   SPnet番外