RMX-SJ13 整備資料



 2020.04.10.チャンパーの耐熱塗装の空焼き硬化にカセットバーナーを使う





「チャンバーに耐熱塗装は必要か」という疑問から、アクリル塗装をしてその状態をみることにしました。 → チャンバー塗装に耐熱塗料は必要?
その後、2500㎞走行。アクリル塗装はチャンバーの「最初の曲がり」部分が剥げていました。
この部分には耐熱塗装が必要なのです。
問題は、この部分が排気ガスの自熱では充分に空焼き硬化できないこと。
どうしても、何らかの方法で空焼き硬化させなければなりません。
使ったのは、カセットバーナー。
「中から焼く方法」と「外から焼く方法」の二つを試しましたが、短時間できれいに焼けるのは「中から焼く方法」。
耐熱塗装は塗装対象物の中から(対象物側から)焼いて硬化するようになっているのでしょうか?
また、塗装剥がし剤(剥離剤)も使ってみました。


アクリル塗装後2500㎞走行での状態
カセットバーナーで中から焼く
塗装剥がし剤
カセットバーナーで外から焼く
「中から焼く」のと「外から焼く」の比較

2017.11.15  耐熱塗料の空焼き硬化の方法と「マフラーに耐熱塗装が必要か?」

2018.06.27. モタードRMX② のギヤオイルが黒くて燃費が悪い-その6 / その後



1.カセットバーナーで中から焼く

      
a.アクリル塗装後 2500㎞走行の状態


  2018.06にアクリル塗装したチャンバーの状態です。 → チャンバー塗装に耐熱塗料は必要?

  当時のオドメーターは 22501㎞、現在は 25422㎞。
  走行距離=(25422-22501)×0.844≒2465㎞。
  アクリル塗装が部分的に剥げています。
  この部分には「アクリル塗装が適しない」ことになります。

  ただ、この部分は耐熱塗装をしても排気ガスの自熱で空焼き硬化できません。
  別の方法が必要です。


  剥げている部分が温度が高くなるのでしょう。   出口付近と排気ガスが当たる外側カーブの部分が剥げています。


  400番ペーパーで残っている塗装を剥がしました。   残っている部分も劣化しているのか、それほど時間はかかりませんでした。

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b.カセットバーナーで中から焼く


  使うのはカセットバーナー(トーチ)。
・新富士バーナー株式会社
・RZ-730S → こちら ・ こちら
・電子着火式,瞬間気化方式,一般のカセットが使えます。

  耐熱塗料は「いつも使っているKURE」。 → こちら ・  こちら
  これが気に入っているわけではありません。
  以前との比較のために同じものを使っているだけです。
・耐熱温度 600℃
・空焼き硬化は 200℃で1時間

  バーナーの取り扱い説明書では炎の長さは125㎜、炎の先は1300℃。
  一般にバーナーの外炎(弱い青紫色)が1400℃~1500℃、内炎(青~青緑色)が500℃。
  炎を直接当てると耐熱塗料の耐熱温度600℃を超えてしまいます。

  ※ホームセンターでも簡単に入手できます。送料が高くなるのでホームセンターがお勧め。


  バーナーの炎を「チャンバーの内部に当て」ました。
  1300℃の炎を排気ガスの代わりにしたのです。
  その前に、エキゾーストパイプOリングを外すのをお忘れなく。


  赤外線放射温度計(放射率0.95)で外部(塗装面)の温度を測定しました。

  当初は190℃~340℃、
  しばらくすると、a / 280℃,b / 332℃,c / 425℃,d / 273℃
  どの部分も空焼き硬化に必要な200℃を超えています。
  炎が直接当たっているc付近が高温になります。
  c付近の内部はオレンジ色に焼けています。
  耐熱温度の600℃を超えることはないでしょうが、
  均等に焼くためにば炎が直接当たる部分をときどき変えた方がよいでしょう。

  すぐに塗装面からユラユラと白煙が出てきます。
  FJのエキゾーストバイプではエンジンをかけると「モウモウ」と白煙が出ました。
  こちらは「ユラユラ」です。

  炎の当てる部分を変えると、ユラユラ白煙の出る場所が変わります。
  トーチを突っ込んだり、角度を変えたり。
  ユラユラ白煙が出なくなったら空焼き終了。5分程度です。
  「200℃で1時間必要」とのことですが、5分で充分です。

焼き上がりの状態です。

  表面はサラサラしてツヤがなくなっています。   空焼き硬化ができていないと、温度を上げると表面が軟らかくなってツヤが出てきます。
  トーチの炎を遠くから当ててもツヤが出てこなければ空焼き硬化OKです。



2.カセットバーナーで外から焼く


トーチを中に当てて空焼き硬化ができるのは「チャンバーの最初の曲がりの部分」だけ。
「二番目の曲がりの部分」には通用しません。
「二番目の曲がりの部分」に内部から炎を当てることができないからです。

もちろん、「二番目の曲がりの部分」に耐熱塗装は必要ありません。
アクリル塗装も剥げていません。

しかし、「カセットバーナーで直接空焼きをしてみたい」ので「外から焼くこと」を試してみました。
使うのは耐熱塗装をして排気ガスによる自熱空焼き硬化に失敗して、取り替えた5.4㎏のチャンバー → こちら

※注意
フレキシブルノズルのカセットバーナーガあります。 → こちら ・ こちら ・ こちら
これを使えば、「二番目の曲がり」の部分を中から焼くことができるかもしれません。
ただし、私はそれを検証していませんのでうまく焼けるかどうか分かりません。
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a.塗装剥がし剤


  塗装を剥がす前に、バーナーを当てて表面温度を調べました。
  炎を当ててしばらくすると、炎の当たっている部分は280℃。
  炎の長さの中央の青色の部分をしばらく当てても400℃。
  マックス1300℃の炎を当てたからといって、その部分が1300℃になるわけではないのです。
  これなら、炎を動かしなから当てれば外側から焼くことは可能です。
  目安は「白煙を出す」こと。

  新しく耐熱塗装をするためにペーパーで塗装を剥がし始めました。
  しかし、「もっと簡単に剥がす方法があるのでは?」という怠け心。
  候補に上がったのが「剥離剤」


  使うのは「塗料はがし剤/ ニッペホームプロダクツ」 → こちら ・ こちら
  表面を120番のペーパーで傷をつけたあとに塗ります。
  塗って10分程度で塗装面にシワが寄って浮き上がってきます。
  「これを取り去れば地金が見える!」


  そんな甘くはありません。
  これは、表面をステンレスたわしで取り去った状態。
  残る所には残っています。
  残っている部分に120番ペーパーで傷をつけて二回目の剥離剤塗布。


  塗装面が軟らかくなってきたら、剥離剤がついたままステンレスたわしで磨きます。
  剥離剤は「塗装面を軟らかくする」だけと心得ましょう。
  「剥離剤塗布二回目+ステンレスたわし」の結果がこの状態。


  これを「120番 → 240番 → 400番」で磨きました。
  つなぎ目の部分の塗装は完全に落ちていませんが、
  元々が耐熱塗装なので完全に落とす必要はありません。
  これなら、剥離剤を使わないで「120番 → 240番 → 400番」を使っても同じ。
  何事においても「近道はない」ようです。

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b.カセットバーナーで外から焼く


  台所洗剤で脱脂して、耐熱塗料を軽く二回吹き。
  乾燥後の状態です。

  表面はやや光沢(艶)があります。
  触ると「サラサラ」ではなく、少し指にひっかかる「湿っぽさ」。
  塗装面が少し軟らかいような感じがします。

  まずは、「二番目の曲がり」部分を焼きます。
  焼く前の表面温度は31.3℃を計測。


  炎の中程(バーナー口から10㎝くらいの部分)を3㎝巾で動かして当てます。
・2分 : 170℃、平坦だった塗装面がブツブツ状になるが白煙なし。
・3分 : 300℃になるが白煙なし。
・13分 : 350℃~400℃になるが白煙なし。
  チャンバー入口からタールが燃えた煙が出てくるだけ。
  ドライバーの先端で擦ってみると、塗装面は硬化しています。
  しかし、このブツブツ面がきれいにならなければなりません。
  炎を当てる時間をもっと長くすれば、このブツブツが消えてしまうのでしょうか?


それを試すために、一カ所に集中して炎を当てました。

  3㎝Φ程度に炎を10分間つづけて当てる。何度は280℃~340℃。
  塗装面のツブがところどころ燃えて赤くなっている。
  さまして表面のツブツブを軽く取り去った状態。平坦ではない。
  バーナーを内側に当てたときより仕上がりが粗い。※中央下の楕円は塗装むら。


結局、炎を塗装面に直接当てた場合
・表面温度が300℃を超えても白煙はでない。
・塗装は硬化するが、表面にブツブツが残る。
・3㎝Φをその状態にするのに10分かかる。

バーナーで外から焼く場合、仕上がりが悪いし、全体を空焼き硬化させようとするととてつもない時間がかかることになります。
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c.中から焼いた場合との比較


「第二の曲がりの表側の残り」をバーナーで動かしながら焼いたあと、「最初の曲がり」を「中から」焼いて仕上がりを比較してみました。


  炎を中に入れるとすぐに白煙が出始め、5分で白煙がでなくなります。
  表面温度は380℃。
  「最初の曲がり」は裏も表もきれいに「空焼き硬化」できます。
  同じ、380℃でも内側から焼けば5分で全体がこの状態。
  外側から焼けば、3㎝Φの広さに5分程度かかり仕上がりはブツブツ。
  耐熱塗装の空焼き硬化は内側から焼くようになっているのでしょうか?


結局、「最初の曲がり」だけ耐熱塗装の空焼き硬化、「第二の曲がり」の耐熱塗装は剥がして、他の部分と同じ「つや消し黒」のアクリル塗装にしました。
「第二の曲がり」の耐熱塗装を剥がすときに、バーナーで外から焼いた「表部分」は「塗装が乾いていてペーパーがかかりやすい」のに対し、
バーナーを当てていない「裏部分」は「塗装が湿っていてペーパーがかけにくい」ので、確かに「バーナーでの空焼き硬化はなにがしか出来ている」と言えるでしょう。
しかし、問題は仕上がりの悪さと所要時間。

  結論としては、
  ①耐熱塗装の空焼き硬化は排気ガスの自熱により行うのが原則。
  ②排気ガスの自熱により空焼き硬化ができない部分には耐熱塗装の必要はない。
  ③ただし、②でアクリル塗装では剥げてしまう場合は耐熱塗装をして、
    内側にバーナーの炎を当てて中から焼いて空焼き硬化をする。

  今回の「RMXチャンバーの最初の曲がり部分」が②に該当。
  FJではエキゾーストパイプとマフラーの間にあるチャンバー(エキゾーストジョイント)がこれ。
  中央部で164℃、出口で140℃(※マフラーに耐熱塗装は必要か)だから、
  「アクリル塗装では剥げてくるが耐熱塗装をしても排気ガスの自熱では硬化しない」でしょう。
  この場合なら、
  耐熱塗装をしてチャンバーの入口と出口からバーナーの炎を入れて焼くことになります。


どこかのサイトに「耐熱塗装の空焼き硬化はバーナーで焼きます。ちょっとコツが必要ですが。」という説明がありました。
その「コツ」を書かなければ意味がないと思いませんか?

そもそも、ネット上では「知られている情報・知識」しか得られません。
これは、誰かが書いたものを、自分で検証しないでそのまま取り上げる。
それをまた誰かが取り上げる。それがあちらこちらで繰り返されて「同じような情報・知識」がネット上に出回る。
なかには、自分の推測を勝手に付け加えるので、伝言ゲームのように間違った情報・知識になってしまう。

ネットで得た情報・知識を取り上げる場合には、それを見た他の人がその情報・知識を検証できるように、
その情報・知識の出所やその結果に至った方法などを付け加えることが必要です。

当サイトに書いてある情報を取り上げる場合にも、その結果だけを「〇〇する方法」や「〇〇だよ」と書くのではなく、
それに至った方法・付帯情報や当サイトへのリンクを貼って、それを見た他の人がその結果を検証できるようにしておいてください。

以上、「軽薄短小」・「まとめ情報」の昨今にちょっと苦言を。


耐熱塗装の空焼き硬化については、ヒートガン,電気コンロ、石油ストーブ、iH で失敗し(2017.11.15  耐熱塗料の空焼き硬化の方法)
今回「カセットバーナーで外から焼く」でも失敗しました。
「外から焼く方法」で残るのは「陶器を焼く電器窯」しかないようです。

もらろん、外から焼く方法にこだわる必要はありません。中から焼けば「必要充分な部分の空焼き硬化ができる」からです。
今回の検証で私の中では「耐熱塗装の空焼き硬化の方法」が固まりました。


つづく




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